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「国体」と日本の近代 人文学部教員 白井 聡 アセンブリーアワー講演会レポート

2018年11月22日(14:40~16:10)本学内友愛館アゴラホールにてアセンブリーアワー講演会が開催されました。このアセンブリーアワーは本学が開学した1968年から続く学内外の一線で活躍するゲストを招いての講演会です。今回の講師は本学人文学部教員で政治学・社会思想家の白井聡です。平日にも関わらず約150名の参加者で会場はほぼ満席となりました。
 
まず、北方領土問題を切り口に主権をどう考えるか、世論と交渉内容の関係性について説明された上で、これまでの歴史的経緯の解説と今後の進展についての見解を述べられました。
同時に竹島、尖閣諸島の問題を含め、日本が抱える領土問題は敗戦処理であるが故に解決が困難であるとの認識を示されました。また、先の大戦は日本にとって終戦ではなく敗戦であり、その後対米従属の呪縛から解かれていないことや、鈴木宗男事件についても触れられ領土問題に関連する持論を展開されました。
 後半は国体(国のありかた)について論じられました。世界には対米従属している国はたくさんあるが、日本は従属していることを否認しながら従属していることが極めて特殊であると指摘されました。それは支配、被支配の関係性ではなく家族国家観的、情緒的なもので、戦前の国体であった天皇制と酷似しており、戦後の国体はアメリカが戦前の天皇の後継者となったとの斬新な視点を示され、参加者は熱心に聞き入っていました。戦前は天皇が私達を愛してくれていた。戦後はアメリカが私達を愛してくれている。つまりは従属ではないと思いこんでいるというものです。
 
明治維新(1868年)から敗戦(1945年)までが77年、2022年は戦後77年となり、国体の折り返し地点に向っています。私達はどのような未来を迎えるのでしょうか。大変示唆に富みながら明快で考えさせられる講演でした。

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